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顎関節症について

矯正治療が原因で顎関節症が発症したり、酷くなったりすることはあるのか?

文責:柴口竜也,布袋善久

適切な矯正治療を行っても、残念ながら、その治療中に顎関節症状を認めることがあります。果たしてこれは、矯正治療が原因となって起こったのでしょうか。結論から申しますと、そのようなことを示唆する研究や報告はありません。それでは、矯正治療中と矯正治療後に分けて、詳しくみていきます。

もし、矯正治療中に顎関節症が発症したら・・・

顎関節症は若い女性に多いことを説明しましたが、多くの場合その発症は、中学生から高校生にかけての時期に認められます。女性にとって、この年頃は矯正治療の最適齢期であります。つまり、発症時期と矯正治療の最適時期が重なっているため、全く矯正治療と関係なく顎関節症が発症しても、まるで矯正治療のせいに感じられます。矯正治療中に顎関節症を発症したほとんどのケースはこのような場合であり、本来噛み合わせをよくするはずの矯正が悪者として誤解を受けやすいのです。

ストレスが増加すると歯ぎしりも増えることが知られていますが、矯正治療自身がストレスとなり、治療中に一時的に歯ぎしりが増加することがあります。このような場合に、他の原因と組み合わさって、顎関節症状が出現することが希にあります。ただし、ほとんどの場合一時的で、その後症状が酷くなることはほとんどありませんし、矯正治療単独で顎関節症を引き起こすという報告はありません。

矯正治療では、抜歯をして歯を並べることがあります。この場合、噛み合う歯の数が減少して噛み合わせが低くなり、顎関節にかかる負荷が大きくなる可能性があります。また、治療前後で噛み合わせが大きく変化しますので、顎関節に与える影響も大きいはずだと仮定し、多くの研究がなされました。しかし、そのような大きな変化の場合においてさえも、矯正治療が顎関節症の発症に影響を与えているという報告はありません。

もし、矯正治療中に症状が発現した場合の対処方法は・・・

対処方法ですが、基本的には、一般の顎関節症と同じです。関節雑音のみ認められ、痛みや開口障害が認められないのなら、特別な対処の必要は無く、経過観察のみ続けます。痛みが認められるのなら、矯正装置の一時的撤去や矯正力を弱めるといった矯正的に必要な処置を行った後、温めたり・冷やしたりといった温熱療法やマッサージ等の理学療法を行います。また、消炎鎮痛剤を服用してもらうこともあります。もともと、顎関節症は、安静にしていれば経過が極めて良好な病気なので、たいていは、これらの治療で治まってしまいます。少し症状が長引く場合には、スプリント療法という、夜間装着のマウスピースによる治療を行います。スプリント療法は、夜間に病的な歯ぎしりや食いしばりをしている人に特に有効です。これでも治まらず、開口障害が長期に及ぶような場合は、関節内部の癒着が疑われますので、口腔外科へ受診してもらい、パンピング・マニピュレーションといった比較的簡単な外科処置が必要になることもあります。しかし、今までの20年以上の臨床経験で、外科処置が必要になるほどの症例に遭遇したことはありません。

もし、矯正治療後に顎関節症が発症したら・・・

矯正治療後の比較的早い時期に症状がでることもあります。そのようなケースは、元々症状があったものが治療中に一時的に消え、また、治療後症状が現れるという経過をたどったものかもしれません。矯正治療中には、歯が非生理的な状況に置かれることがあり、その場合に、顎関節や咀嚼筋の反応が鈍くなることがあります。そのため一時的に症状に対しても鈍感になります。このような経緯を考えると、治療が症状を増悪させたわけではありません。

矯正治療後、長期間経った場合はどうでしょうか?矯正治療を受けた人と、そうでない人を比較した場合、顎関節症の発症に全く差がないことが、世界中の多くの研究で認められています。つまり、長期的に見て、矯正治療が顎関節症の原因となることはないようです。


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