治療案内
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外科矯正

文責:布袋善久

1.外科矯正とは

外科矯正治療とは、顎変形症(著しい骨格性不正咬合)の治療として、通常の歯列矯正だけでは十分にかみ合わせを改善することが難しい場合に、矯正歯科治療と外科的手術を併用することで、骨格性に問題のある不正咬合のかみ合せとプロファイル(顔貌)を改善する治療方法です。

顎変形症とは、上下のあごが、「前後」、「左右」、「上下」に大きくずれている状態を指します。具体的には、「反対咬合」、「上顎前突」、「開咬」、「下顎骨の偏位」などで、上下顎の骨のアンバランスにその原因があるようなかみ合わせです。

このような不正咬合の場合、見た目のコンプレックスとともに、「うまく咬めない」といった歯本来が持つ「咬む」機能が損なわれている場合を多く見かけます。また、発音、食事などに問題があることもあります。このような不正咬合に対して、学童期のお子さんと全身成長の終了した成人のかたでは治療法が大きく異なります。特に、成長の終了した成人の方においては、通常の矯正治療だけでは、審美的に、また機能的に十分な結果を得るには限界がある場合がでてきます

そのような際に、選択肢として「矯正歯科治療+外科手術」をあげることが出来ます。矯正歯科治療に外科手術を組み合わせることで、あごの骨を延長したり、縮小することが可能です。その結果、矯正歯科治療だけでは実現できなかった、審美的、機能的に満足できる結果をえることが可能です。この治療法を「外科矯正」と呼んでおります。

また、矯正歯科治療については、顎変形症の施設基準(顎口腔機能診断施設)を満たした診療所に限って、健康保険の適用となります(当クリニックでは堺クリニックにおいてのみ外科矯正の治療をお受けし、保険適用となります)。

その場合は、病院での手術費や入院費も健康保険の適用となります。また手術の費用は高額療養費の対象となるため、申請すれば一部返還される場合もあります。ただ、矯正歯科治療が自費の場合は、同じ病院、同じ手術内容であっても、健康保険の非適用となりますので、注意が必要です。

保険適応の場合の治療費の目安についてお話いたします。一言で外科矯正と言いましても、上下顎同時の手術の場合と下顎単独の場合があり、その手術内容、入院期間も異なります。そのため、一般論になりますが自己負担分は、「矯正歯科治療費+外科手術費+入院費用」で「約40万円~60万円」となります。
保険適用と言いましても、顎変形症の外科矯正の場合、費用的に決して安いものではありません。ただ、厚労省が「病気」と認めてくれており、保険適用となることから、治療が大がかりになるにも関わらず、通常の歯列矯正と比較しても、費用的に安くなる場合がほとんどです。これは、「かみ合わせ」、「外見」を気にされる方にとってはありがたいことだと思います。

美容整形外科でも「外見」の改善のため、外科手術を行っておりますが、それらと「外科矯正」は区別されております。外科矯正は顎変形症の治療に外科手術の併用が必要と診断をされた患者さんに対する治療方法で、外科的手術と矯正治療の両方を施します。美容整形外科での施術とどちらが良いと優劣をつけるものではありませんが、治療期間が許せば、機能性と審美性の両面からアプローチする「外科矯正」の方が術後の安定面も含めて、優れていると確信しております。

美容整形外科での手術は自費となりますが、「外科矯正」の場合、顎口腔機能診断施設においては健康保険の適用ということも見逃せません。

2.外科矯正に対する私の考え

その外科矯正に対する私の考えを、お話させていただきます。前述の様に外科矯正とは、「著しく骨格不正のある場合に、矯正治療+外科矯正」で治療することを意味します。治療に外科手術を組み合わせることで、治療結果として、外見も含めた著しい改善が可能です。

ただし、外科手術は全身麻酔下で行い、当然それにともなうリスクも存在します。また、1~3週間程度の入院も必要です。退院後も中期にわたって下顎に知覚麻痺が残る場合もあります。そのため、安易にどなたにでもお勧めできる治療法ではないと考えます。もし、「少し咬みにくいなぁ」、「少し、外見が気になるなぁ」程度であれば、外科矯正治療をお勧めいたしません。

観点が変わりますが、世の中には、治らない病気がたくさんあります。病気の数でいえば、治らない病気の方が多いと言われております。その中で「顎変形症」は治る病気です(顎変形症を病気と呼ぶには議論もあるかと思いますが、厚労省が保険適応としていることから、ここでは病気と呼ばせていただきます)。そのため、ご自身のかみ合わせ、外見等に著しくコンプレックスを感じているようなら、「外科矯正」という選択肢もお考えください。そのような方にとっては治療法が確立しており「治る」ということは素晴らしいことだと思っております。

そのため、外科矯正は、こちらからお勧めする治療法ではなく、「顎変形症にたいして、このような治療法がある」と提案すべきものだと考えております。それを治療法として受け入れるかどうかは、患者さん個々の考え方次第ではないでしょうか。

3.実際の治療例

初診時年齢23歳の成人男性です、受け口での外見上のコンプレックスを主訴に来院されました。かみ合わせにも大きな不正が認められました。術前矯正を約1年行った後、外科手術を受けていただきました。術後矯正1年を経て、矯正装置を撤去し動的治療を終了しております。結果として、主訴であったプロファイルの改善と共にかみ合わせの改善も行うことが出来ました。

初診時

外科手術前

動的治療終了時

4.治療の流れ

緑色:矯正歯科での治療 青色:病院(口腔外科)での治療

初診
通常の初診内容と同じく、治療方針、治療期間、費用についてお話いたします。「外科矯正」の場合は、さらに通常の歯列矯正が非適応かどうかの判断、もし外科矯正の適応ならなら、そのメリットとデメリット(リスク)についてお話いたします
精密検査・診断
初診後に、さらに詳しい説明をご希望の場合、検査に進みます。内容は、顎機能検査を含んだ精密検査となります。
診断時には、その検査内容を踏まえて、外科手術の方法を含めた治療方針、を相談いたします
関連病院受診
診断時の検査結果と治療方針を診療情報として提供し、外科手術ための関連病院(口腔外科)を受診いただきます。
口腔外科では、全身の検査(問診、血液検査等)を受け、手術可能かどうか判定を受け、全身麻酔下の外科手術について説明も受けます。
(これは、私の個人的な意見ですが、もし、外科矯正に踏み切るかどうか悩まれているなら、具体的にこのステップまでの診察を受け、説明を聞かれてから、熟考されても良いと思います。もちろん費用と期間はかかりますが、漠然と悩まれるより、よりはっきりと外科矯正のメリットデメリットを理解いただけると思います。)
術前矯正(1~2年、毎月の受診)
診断時の内容に基づきエッジワイズ装置による歯の配列を行います。この段階では、手術後にうまくかみ合うように歯並びを整えます。そのため、歯は並びますが、受け口などの骨格的不正はまったく改善されておりません。
手術入院前後
手術の3ヵ月前に、再度、口腔外科を受診し、手術日を含めた詳細な内容の打ち合わせを行います。
通常は、手術前日に入院し、手術を受けます。術後は、約7~20日後の退院となります。
術後矯正(1~2年、毎月の受診)
術後、腫れなどの退く2~4週後を目処に来院いただき、最終調整のために矯正治療を継続します。
矯正治療終了(保定開始、半年に一度程度の受診)
歯列矯正の装置を外し、夜間装着する装置に切り替えて、歯並びの安定を図ります。

外科矯正での当院の関連病院は以下の通りです。
ご住所などに応じて、当院から紹介させていただきます。

大阪大学歯学部付属病院
第一口腔外科 古郷 幹彦 教授
大阪府急性期総合医療センター
歯科口腔外科 石原 修 部長
NTT西日本病院
口腔外科 美馬 孝至 部長

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